2022年1月より、高所作業(高さ2m以上での作業)を行う際は墜落制止用器具の着用が義務化されました。特に、高さ6.75m以上での作業や、高さ2m以上でも作業床の無い箇所、作業床の端、開口部等で囲い・手すり等の設置が困難な箇所で作業する際は、フルハーネス型の墜落制止用器具の着用が必要です。自動車整備においても特に大型車整備を実施する場合、高所作業を伴うため、墜落制止用器具の着用が求められますが、フルハーネスの接続先(命綱となる設備)がないケースがあり、墜落・転落事故のリスクを低減できていない現場があるのも事実です。ANZENではこうした課題に向き合い、自動車整備事業者向けに常設型転落防止システム「アクロバット」をラインナップしました。フルハーネスの接続先(命綱となる設備)を設置することで墜落制止用器具の有効化が図られます。
高所作業における墜落・転落は作業者の負傷や死亡に至る可能性がある重大な労働災害です。厚生労働省がまとめた2023年の労働災害発生状況では「墜落・転落」による死者数は前年比で12.8%減少したものの、204人の作業者が亡くなられ、事故型別のワーストを記録しています。また、休業4日以上の負傷者は前年比0.7%増の2万758人となり、今も深刻な状況が続いています。死傷者が伴う事故が改善しない背景については点検・整備(メンテナンス)業務などの業種では目的業務が高所作業ではないため、安全対策が曖昧になるケースがあるとの指摘があります。まさに大型車整備がそれに該当しており、早急な安全対策が求められています。
常設型転落防止システム「アクロバット」は先述したフルハーネスの接続先を有するシステムで、万が一の際、作業者の墜落・転落を防止する設備です。今回提案するのは「アクロバット」の「懸垂型ワイヤータイプ」及び「懸垂型レールタイプ」と、屋外作業において、フルハーネスの接続先がない状況で活躍する「AK Davits(懸垂型支柱シリーズ)」です。
懸垂型ワイヤータイプは常設型の転落防止対策のひとつであり、整備作業場の天井部に剛性のあるステンレスワイヤーを設置するシステムです。特殊構造の「グライダー」と呼ばれるワイヤー接続金具に安全ブロックを併設することで、地上からでもフルハーネスへの接続が可能となります。ワイヤーが垂れさがらないよう梁やH鋼などに支持金物を設置するため、支持金物を超えて移動する際に掛け替えが必要となりますが、グライダーのパススルー機能によって、掛け替えすることなくワイヤーと作業者を繋いだまま作業を行うことが可能です。また、ショックアブソーバーを含めた衝撃吸収構造を有しており、万が一の際、作業者へかかる衝撃を吸収します。
「アクロバット」懸垂型ワイヤータイプ | グライダーのパススルー機能により支持部を掛け替えせず移動が可能 |
製品動画 | 導入実績 |
一方の懸垂型レールタイプも常設型転落防止システム「アクロバット」シリーズのひとつであり、こちらは天井部に耐久性の高いアルミニウム製のレールを設置するシステムです。ワイヤータイプとは異なり、カーブのレイアウトを作ることもできます。専用トローリーをレールに装着の上、安全ブロックを併設することで、地上からでもフルハーネスへの接続が可能となります。スムーズな移動が可能な他、体重を預けた状態での作業が行える点がメリットです。
導入実績 |
懸垂型ワイヤータイプやレールタイプは屋内作業のシーンで活躍するシステムで、梁やH鋼の無い屋外に設置することは困難です。そこで提案するのが懸垂型支柱シリーズの「AK Davits」です。全高6.5m、支柱から伸びる突梁の先端に安全ブロックを取り付け、屋外での高所作業の安全対策として使用できます。筋交部にはショックアブソーバーを内蔵しており、落下時の衝撃を吸収します。また、フォークリフトで移動できるタイプもあり、トラックの荷役作業にも使用できるため、大型車の自家工場では利便性の高い転落防止システムといえます。
フルハーネスの接続先を常設することで、墜落制止用器具はさらに有効化します。整備士の安全・安心を促進する転落防止システムは大型車整備必須のアイテムです。
法令の規制と義務を負うことはコンプライアンス上不可欠ですが、規制値の6.75mとは関係なく、高所から作業者が転落した場合は深刻な事故に繋がります。高所作業が伴う整備を実施する事業者では今一度安全対策を点検し、必要に応じた対応をとっていただきたいとANZENは考えます。
懸垂型支柱シリーズ(可搬型)「AK Davits」 重量固定タイプ(可搬式) |
「AK Davits」を使用した作業の様子 |