2020年4月1日より施行された改正道路運送車両法により、従来の分解整備は特定整備と名称を変え、法令に規定される整備の範囲が拡大しました。拡大した整備は、先進安全や運転支援機能に搭載されているセンサーなどの電子制御装置です。保安基準が設定されたことにより、対象装置の交換や改造、そして調整(エーミング)などを行う際は電子制御装置整備認証が必要となりました。ただし、認証には4年間の経過措置期間が設けられ、これまで電子制御装置の整備を実施(経営)していた事業場は電子制御装置整備認証を取得していなくても、引き続き整備が実施できる措置が設けられてきました。今年4月1日、特定整備の施行から4年を迎えることで経過措置は終了し、制度の本格運用が始まります。認証を持たない整備事業場が電子制御装置整備を行った場合、未認証行為となり、認証を持たない指定整備工場は保安基準適合証を交付することはできません。
電子制御装置整備には対象装置と対象車が規定されています。対象装置は車両前方を視認するセンサー類で、主にフロントガラスに装着されたカメラとエンブレムの裏側やフロントバンパー近くに装備されたレーダーが対象となります。対象車は保安基準が設定された車両ですが、使用過程車の中には改良前後で対象と非対象で分かれるケースもあり、注意が必要です。また、対象装置がフロントバンパーやフロントグリルに取り付けられている場合があります。その場合はバンパーやグリルも対象装置となる場合があります。
電子制御装置整備認証を取得していない事業者は車両が入庫する際、たとえ電子制御装置整備の作業が伴わなくても、対象車か否かの確認は行っておくことが望ましいでしょう。対象車、非対象車という認識を持つことで、予期せぬ状況の際の対応方法が変わります。なお、対象車と対象装置は国土交通省のホームページから確認することができます。
国土交通省 電子制御対象車両
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr9_Target_vehicle.html
国土交通省の電子制御装置整備対象車のページ。メーカー毎に検索可能
認証を取得している整備事業者は電子制御装置整備を実施することが可能ですが、センサー交換後の調整作業は自社の作業場の条件や設備の有無によって、作業できない場合が少なくありません。ADASの高機能化は急速に進んでおり、カメラやセンサーの進化や1台のクルマに搭載されるセンサーの数が増加するなど、エーミングに使用するツールも多様化しています。センサー交換後、自社でエーミングできない場合、外注に出す必要が生じますが、その場合の移動やお客様への納期の変更など、業務量が多くなるため、車両の入庫時に整備要領書を参照し、センサー交換後のエーミングの有無、必要な条件とツールなどを確認することが望ましいです。また、自社で行える電子制御装置整備と行えない作業を選り分けて、社内で共有する必要もありそうです。
エーミング作業を簡単、正確に完了できる乗用車向けエーミングツール
10月1日より開始されるOBD検査では電子制御装置の項目を中心とするOBDによる検査が行われます。OBD検査システムと通信することでOBD検査は合否判定が行われますが、特定DTCが検出された際の対応方法についても検討し、準備することも重要です。電子制御装置整備に関わる作業をはじめ、対象装置ではなくてもエーミングを要する作業も含め、自社の認証、作業場の条件と設備などを勘案し、外注ネットワークを構築する必要があります。特に電子制御装置整備の認証を取得していない事業者は注意が必要です。
また、今後はOBDのDTC管理が重要になってくることが考えられます。部品の取り外しなどでDTCを検出する場合もあり、検出されたDTCが入庫前から記録されていたものか、自社で記録させてしまったものかを判断するため、入庫前と納車前のDTCチェックは重要となるでしょう。
整備用スキャンツール「Maxisys(マキシシス)」とOBD検査専用スキャンツール「スマートOBD」