4月1日(土)より、中小企業を対象とする時間外労働(残業)の割増賃金率が引き上げられました。経営者が従業員に支払う時間外労働の割増賃金率は月60時間を超えた場合、大企業が50%、中小企業は25%で運用されてきましたが、「働き方改革関連法」の猶予期間の終了にともない、中小企業の割増賃金率についても大企業と同様、50%以上で支払う義務が生じました。引き上げに当たっては多くの自動車整備事業者の皆様が対象になると考えられます。就業規則の変更をはじめ、早ければ直近の給与支払いにも割増賃金率を反映させる必要がありますのでご注意ください。
具体的な割増賃金の算定方法は、1か月間のうちの時間外労働が、60時間以下の場合、割増賃金率は従来通り25%で計算しますが、60時間を超えた残業に対しては50%の率で賃金を算出することになります。4月1日(土)からのスタートとなるため、給与計算期間が月をまたぐ事業者は早ければ4月の給与支払いから50%の割増賃金率が適用になる可能性があります。例えば16日を給与計算の起算日としている場合、4月1日(土)以降に時間外労働が60時間を超えると、適用になります。なお、割増賃金の支払いには金銭ではなく有給休暇(代替休暇)を付与することも可能です。ただし、従業員に代休取得を強制させることはできません。
なお、時間外労働時間の算定などには休日労働や深夜労働も該当します。例えば、月60 時間の時間外労働時間には、法定休日に行った労働時間は含まれず、所定休日のみ適用されます。うっかり、時間外労働の算出に法定休日を加算しないよう注意が必要です。なお、法定休日労働の割増賃金率は35%です。
また、深夜労働(22:00~5:00)にも注意が必要です。深夜労働の割増賃金は25%ですが、月60 時間を超える時間外労働を深夜の時間帯に行わせる場合は、 深夜割増賃金率25%に時間外割増賃金率50%を足した75%を支払わなければなりません。
割増賃金率の引き上げに合わせて就業規則の変更が必要となる場合があります。その場合、時間外労働60時間以下と60時間超の割増賃金率を併記して記載することが望ましいといえます。もし就業規則の変更、従業員に対する告知などをまだ行っていない場合は早急に行う必要があります。下記は厚生労働省が示した就業規則の記載例です。
整備事業者の場合、お客様への納車やクレーム対応、繁忙期の業務に加え、レッカーサービスの実施などにより、勤務時間や勤務形態が不規則になることが珍しくありません。また、人手不足により一人当たりの業務量が増加し、その結果、時間外労働が増加するケースもあるでしょう。「働き方改革関連法」の趣旨は従業員に対し、長時間にわたる時間外労働を抑制することで、ワークライフバランスを推進することです。割増賃金率の変更を機に、整備作業のどの部分にロスが生まれているかを把握し、その作業の省力化を図り、生産性の効率化を結びつけることが、ひとつの解となりえます。最新の整備機器やDX(デジタルトランスフォーメーション)などで、従業員の健康促進と時間外労働によるコスト増抑制に努めてみてはいかがでしょうか。ANZENでは省力化・効率化につながる機器をご用意しておりますので、お気軽にお問合せください。