国土交通省は自動車ガラスフィルムメーカーより着色フィルム装着車の取り扱いについて運支局ごとに指定自動車整備事業に対する指導が統一されていないとの指摘を受け、自動車窓ガラスの可視光線透過率について、視認により判定ができない場合、可視光線透過率測定器を用いて判定する旨を通達しました。
また、認証工場の持ち込み検査では自動車窓ガラスの可視光線透過率が保安基準に適合せず、検査に不合格になるという事例が近年頻発していることもあわせて、注意が必要です。
可視光線とは文字通り、人の目で見える光のことであり、波長の範囲は約380nm(青)から780nm(赤)の範囲を指します。透過率は光を通す割合のことで、自動車の窓ガラスにおける可視光線透過率は、クルマのハロゲンランプを想定した色温度2856K(ケルビン)の白熱電球の明かりを通して、ガラスを透過する前と後の光の強度差の割合のことをいいます。
自動車窓ガラスの可視光線透過率は道路運送車両法が定める保安基準により70%以上であると定められています。窓ガラスにフィルムが貼られていなければ、可視光線透過率の測定をする必要はありませんが、フィルムが貼り付けられている場合は可視光線透過率を測定したうえで、保安基準に適合しているかを判断する必要があります。可視光線透過率を測定するには、可視光線透過率測定器が必要になりますが、テスターには大別して2種類の機器が存在します。ひとつは独立行政法人自動車技術総合機構の検査場が採用する可視光線透過率測定器、そしてもうひとつがいわゆる簡易測定器と呼ばれる機器です。実は、この簡易測定器の特性を理解しておかなければ、知らないうちにコンプライアンス違反になってしまう可能性があるので注意が必要です。
前述したとおり、可視光線透過率を測定するには定められた光源が必要ですが、一般的な簡易測定器に採用されている光源はLEDが用いられています。この場合、道路運送車両法に規定された要件を満たしていない可能性があります。また、計測器の状態を確認する校正では、グレーのフィルターのみで行われているため、校正範囲が狭いことが特徴です。こうした点から測定結果にはばらつきがあり、着色ガラスにおける測定には誤差が生じることが考えられます。前述した持ち込み検査による可視光線透過率の不合格は簡易測定器による測定だった可能性があります。なお、簡易測定器の校正では機器の名称が可視光線透過率測定器ではなく、ガラス透過率測定器と記載されます。認証工場のみならず、指定工場で簡易測定器を使用する場合、誤差が出ている可能性は否定できません。
弊社で取り扱う可視光線透過率測定器、「PT-500」は法令で定められているとおり、光源は2856Kの白色電球を用い、受光部には等色関数y(λ)と呼ばれる人の目の感度分布で計測を行います。また、70%付近フィルターを校正アダプターとして付属しており、これを使って調整を行うことで70%付近の判定精度を高めることができます。もし、測定時に、投光部と受光部の位置が適切でない場合は、測定しない設計としています。
校正機関では可視光線透過率測定器として校正を受けられるとともに校正範囲には青やオレンジといった着色フィルターも用いられています。なお、「PT-500」は検査場が使用している機器であるため、安心安全の測定器です。
投光部(左)と受光部(右)に窓ガラスを挟み込んで測定を行います