2022年は世界的な物価の高騰と記録的な円安に揺れた1年でした。また、新型コロナウイルス感染症は拡大から3年目となり、ウイルスの変異、生活様式の変化などで、感染拡大は新たな段階を迎えました。行動制限の緩和などにより、社会活動は少しずつ落ち着きを取り戻しつつあります。自動車整備業界では、2023年のオートサービスショーの4年ぶりの開催が発表され、11月26日(土)には1年延期されていた全日本自動車整備技能競技大会が開催されました。自動車整備業界も日常を取り戻しつつあるようです。
自動車整備士資格のレギュレーションの変更という点において、2022年は大きな改革の年になりました。5月25日(水)、国土交通省は「自動車整備士技能検定規則の一部を改正する省令」を公布。クルマの電動化や自動運転レベルの向上などにより、自動車整備の高度化に対応する自動車整備士の育成と確保が求められる中、自動車整備士資格は新たな枠組みに改正されることが決まりました。新制度は2027年1月1日に施行され、新たな自動車整備士技能検定試験が開催される運びとなります。
改正により、三級自動車整備士を除く整備士の技能には電子制御装置整備に関わる知識が求められるなど、修得する分野や領域が改められます。また、一級自動車整備士資格の学科試験に行われる口述試験は廃止となります。整備士資格の抜本的改正により、人材不足や待遇改善の機運が高まるかがおおいに期待されています。
自動車整備のマーケットを考えるうえで、自動車販売の動向は無関係ではありません。長引く新型コロナウイルス感染症の影響で部品流通が途絶えるなど、自動車の生産現場は大きな混乱に見舞われました。2022年1月から10月までの新車販売は347万9,832台で前年比92.6%と減少しました(含軽)。2020年に販売台数が500万台を割り込んで以来、年々減少を続けており、深刻な状況です。また、新車販売の減少は整備のストックマーケットに影響を与えることから、将来的な需要減になる可能性をはらんでいます。
一方、2022年は国内の自動車販売でもEVシフトが鮮明になる年になりました。5月に新型車が2車種。翌月には軽乗用車EVが2車種発売するなど、いよいよEVシフトは国内市場にも波及してきました。
さて、2023年は自動車整備業界にとって、重要なキーポイントは2つあります。ひとつは1月4日(水)よりスタートする車検証の電子化対応です。まず最初は電子車検証へ更新を行うため、陸運支局への出頭が必要ですぐに業務そのものが変わることはありません。しかしながら更新した電子車検証は、納車の際などの場面においてお客様には変更点などを説明する必要はあります。車検証閲覧アプリにより、車検の満了日やプッシュ通知を受けることも可能であり、また重要なリコール情報も知ることができるため、お客様への告知は不可欠といえます。車検証の書き換え業務はまだまだ先の話ではありますが、お客様への電子車検証の説明という点で、まずは車検証の電子化対策に取り組む必要があります。
車載式故障診断装置(OBD)を活用した自動車検査、いわゆるOBD検査が2024年10月1日(火)よりスタートすることに伴い、2023年は、その準備期間として重要な1年になるでしょう。2022年4月より、OBDシステムなどへの登録が開始されるなど、OBD検査を実施する事業者は事前の準備が求められます。
また、2023年10月からはOBD検査のプレ運用がスタートします。詳細はまだ明らかになっていませんが、来たる車検の大改革に向けた重要な準備となるはずです。特にOBD検査に臨むにあたっては電子制御装置整備への対応は不可欠です。2023年は特定整備制度の施行から3年となり、経過措置も残すところあと1年余りとなりました。電子制御装置整備の認証件数は2022年10月末現在で3万9,838件となっており、取得率は半数に満たない状況です。残りの期間で取得する際は混みあうケースが想定されますので、計画的に行う必要があります。
自動車産業は100年に1度の変革期に差しかかっていると言われており、自動車整備もまた大きな曲がり角を迎えています。2023年は、今後の車検と車検整備をうらなう大切な1年となるはずです。